蟹木しとお | 8月某日、診察データ │しとお Vo.VOICEPEAK・Saki @xxxxitoo | Uploaded 1 year ago | Updated 2 minutes ago
音楽/絵/映像 しとお
twitter⇒ twitter.com/xxxshitoo
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Mix/Mastering ive
twitter.com/ive_ryu
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OffVocal⇒ drive.google.com/file/d/1ni44FbU5KeEFkC8CI7WSvItBNUqHnRsX/view?usp=sharing
しとおオフィシャルWEBサイト(楽曲使用についてはガイドラインをご確認ください)
⇒ 410.bitfan.id
──────────────────────────────────
『8月某日、診察データ』
「ねえ、先生。□□くん、私のことが好きだって。
うん、それは嬉しいことで、ありがとう、って笑うべきことなの。
わかってる。ちゃんとそうしたよ」
私は夏の空が憎かった。私は夏の赤に嫌悪していた。
世界で一番大切な家族がいなくなっていった日を思い出すからだ。
その日は蒸し暑くて、汗がじとりと伝う、あれは、汗と他にもなにか、
それで、ええ、君のことを思い出してしまうから。思い出してしまう、思い出して。
思い出して、思い出して、忘れないために。
だけど私が人であるために。
全てを塗り潰すしかなかった。
君はいない 影法師は君じゃない
大人になった 上手く笑えるようになった
「ねえ先生、私はいつになったらあるべき大人になれるんだろう。
悲しいことを糧に生きるなんてかわいそうだし
だからってお葬式で笑っていたら怒られるじゃない」
「だから」
「ねえ先生、私、正しくは生きられているでしょう?」
彼女の大切な記憶は記録となり、思い出は黒く塗り潰された。
それは彼女が生きるために必要な治療だった。
大人になった今、明るく笑える彼女を見て
これは正しかったのだと強く思う。
「ああ、これでよかった」
言葉に出して、強く。
これで、よかったのだ。
その人の名前を、記録としてしか知らない。
■■は私の大切な人だった。思い出そうとして出てくる微かな声が、顔が、いつの日か別の誰かにすり替わっていた。
□□くんの手は暖かくて、
あの日握り返してくれなかった彼の体温と、同じだった。
私を見上げる□□くんの目は大きくて可愛らしくて、
いつも私の頭を撫でてくれた■■の瞳と同じだった。
柔らかく、優しく、私を見下ろすその目。
あれ?
塗り潰したはずの記憶が暖かな思い出に変わっていたとき、私は気付いた。
「ねえ、先生。□□くん、私のことが好きだって」
「どうしようね。ねえ、どうしたらいいんだろう」
「私は彼の顔も名前もわからないのに。
私はきっと、ただ止まった時を眺めているだけなのに」
「それでもいいんだって。
馬鹿だよね」
「でも先生、■■は馬鹿じゃなかったんだ」
「違う、って、思ったんだ」
「私の手を握ってくれるあの子が居るこの夏が
記憶でも記録でもないあの子が
当たり前のことを教えてくれた」
「夏の空は青いんだって、ようやく気付いた」
夏が好きだと笑った 無邪気な子供と呼ぶに相応しい
追い越したはずの背を 縮まらない年月を
もう赤くない夕暮れを あの子のいないこの夏を
君は生きている
私も 生きている
──────────────────────────────────
#しとお
#VOICEPEAK
#Saki(SynthV)
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『8月某日、診察データ』
「ねえ、先生。□□くん、私のことが好きだって。
うん、それは嬉しいことで、ありがとう、って笑うべきことなの。
わかってる。ちゃんとそうしたよ」
私は夏の空が憎かった。私は夏の赤に嫌悪していた。
世界で一番大切な家族がいなくなっていった日を思い出すからだ。
その日は蒸し暑くて、汗がじとりと伝う、あれは、汗と他にもなにか、
それで、ええ、君のことを思い出してしまうから。思い出してしまう、思い出して。
思い出して、思い出して、忘れないために。
だけど私が人であるために。
全てを塗り潰すしかなかった。
君はいない 影法師は君じゃない
大人になった 上手く笑えるようになった
「ねえ先生、私はいつになったらあるべき大人になれるんだろう。
悲しいことを糧に生きるなんてかわいそうだし
だからってお葬式で笑っていたら怒られるじゃない」
「だから」
「ねえ先生、私、正しくは生きられているでしょう?」
彼女の大切な記憶は記録となり、思い出は黒く塗り潰された。
それは彼女が生きるために必要な治療だった。
大人になった今、明るく笑える彼女を見て
これは正しかったのだと強く思う。
「ああ、これでよかった」
言葉に出して、強く。
これで、よかったのだ。
その人の名前を、記録としてしか知らない。
■■は私の大切な人だった。思い出そうとして出てくる微かな声が、顔が、いつの日か別の誰かにすり替わっていた。
□□くんの手は暖かくて、
あの日握り返してくれなかった彼の体温と、同じだった。
私を見上げる□□くんの目は大きくて可愛らしくて、
いつも私の頭を撫でてくれた■■の瞳と同じだった。
柔らかく、優しく、私を見下ろすその目。
あれ?
塗り潰したはずの記憶が暖かな思い出に変わっていたとき、私は気付いた。
「ねえ、先生。□□くん、私のことが好きだって」
「どうしようね。ねえ、どうしたらいいんだろう」
「私は彼の顔も名前もわからないのに。
私はきっと、ただ止まった時を眺めているだけなのに」
「それでもいいんだって。
馬鹿だよね」
「でも先生、■■は馬鹿じゃなかったんだ」
「違う、って、思ったんだ」
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記憶でも記録でもないあの子が
当たり前のことを教えてくれた」
「夏の空は青いんだって、ようやく気付いた」
夏が好きだと笑った 無邪気な子供と呼ぶに相応しい
追い越したはずの背を 縮まらない年月を
もう赤くない夕暮れを あの子のいないこの夏を
君は生きている
私も 生きている
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#しとお
#VOICEPEAK
#Saki(SynthV)
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